半導体装置メーカーE社 商品開発部
デバイス寿命に影響をおよぼすESDダメージを何とかしないと、このままでは…
表面抵抗率のバラツキを抑え、表面と内部の抵抗値を同レベルにできた樹脂の実力とは?
背景
主要取引先である半導体メーカーから、「出荷テストで合格していたICの中に、なぜかデバイス寿命が短いものが一定数含まれている」という話があった。半導体装置の製造・販売を手がけるE社の担当者は、テストから納品までのプロセスに原因があると考え、対策を講じることにした。
課題
さまざまな帯電防止材料を使って試作したが、どれも満足いく結果は得られず…
この件の解決を任された商品開発部のK氏は、まず問題の原因を特定することにしました。その結果、ESD(静電気放電)によるダメージがデバイスの寿命に影響を及ぼしていたことを突き止めます。さらに調査を進めると、ダメージを受けたデバイスには、故障のリスクが存在することも判明しました。
このときの状況をK氏は次のように振り返ります。
「装置間の搬送ライン工程で使用する搬送容器には、ESD対策がされていないものが多いことが分かりました。本来であれば、搬送容器に帯電防止材料を使用するのが好ましいのですが、出来ていません。そこで我々は、ESD対策された搬送容器の開発を企画することにしました。」
K氏たち商品開発部のメンバーは、ポリマーにカーボンブラックや炭素繊維、黒鉛、金属繊維などの導電性フィラーを充填した導電性コンパウンドを準備しました。そして、これらを使用して、搬送容器の試作と評価を繰り返したのです。
ところが、いくら試作しても電気抵抗を静電気拡散性領域内で安定的にコントロールすることが難しく、うまくいきません。また成形品の各々のポイントで表面抵抗値にバラツキが生じてしまうのです。そのため、成形品の表層(スキン層)と内部(コア層)で電気抵抗が大幅に異なる結果ばかりでした。
試作は思うように進まず、具体的な解決策を見つけられない状況にK氏は頭を抱えるばかりでした。
課題のポイント
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ESDダメージ(静電破壊)を受けたデバイスには、故障リスクが存在
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ESD対策の搬送容器開発を、知見のある帯電防止材料で試作するも、電気抵抗を静電気拡散性領域内でコントロールできず、表層と内部で電気抵抗が大幅に異なるなど、製品化は難しい