研究・技術開発力の強化
クレハは、ビジョンとして「独自技術でスペシャリティを追求し、未来を拓く社会貢献企業」を掲げ、中長期経営計画の最重要施策のひとつとして「技術立社の再興」を定め、以下の方針で、新事業開発、新製品開発、プロセス開発力・生産能力強化を推進しています。
技術立社の再興
- 新商品開発と環境負荷低減に資源を集中、差別化された商品の開発を加速
- 他社との協創・協業、M&A等を通じ、自社保有技術と外部技術の融合による、新規事業の創出と拡大
- 成長事業の生産体制構築と環境負荷低減に向けた生産技術力、エンジニアリング力の強化
研究・技術開発体制
2023年4月、クレハは研究開発力の最大化と新規事業創出の実現に向けた組織改編を行い、コーポレート研究を専任とする新事業推進本部を新設しました。組織をフラット化して機動力を向上させ、迅速な意思決定が図れる体制を整えています。また2023年11月、クレハの主要事業のひとつであるKFポリマーの技術課題解決の迅速化を図るために、各種技術開発機能をひとつの指令系統の下に集めたKF技術プロジェクトを設立しました。
取り組み事例
新事業推進本部の設置
2023年4月、クレハは新事業推進本部を新設しました。
当本部では、アプリケーションベースの開発を中心とし、開発テーマの設定段階においてマーケットニーズとアプリケーションを明確にするとともに、特許性を含む差別化、事業経済性の確認を行い、事業モデルを固めた上で開発活動に取り組んでいます。一方、テクノロジーベースのイノベーションが極めて高いテーマにもチャレンジしており、開発とマーケティングを並行して行っています。
新事業推進本部には、新事業製品部・新事業開発部・新事業創出部の3部門を置き、マーケットニーズの把握と先端技術の動向調査のため、専門性の高い人財を各部に配置しています。特に、新事業創出部は米国テキサス州ヒューストンを拠点として、米国でのマーケティングおよび大学・スタートアップに対するテックスカウトを実施しています。
東京研究所の開設
当社の研究開発において、優秀な人財の確保、情報収集能力の強化、外部研究機関との協創・協業、およびマーケティングと研究開発の一体化が課題となっています。それらを解決する研究開発体制の構築施策として、2024年度に東京研究所を開設することとしました。本研究所は各種実験設備を備えながら、都内に立地し利便性に優れ、外部機関との活発なコミュニケーションも期待できます。これらを活用し、今後も独自性のある差別化された技術・製品開発を推進していきます。
車載用リチウムイオン電池バインダー向けPVDFの技術開発
当社は、拡大する電気自動車市場に対して、車載用リチウムイオン電池バインダー向けの PVDF(クレハKFポリマー)の生産能力を増強することを決定し、グローバルでの最適な供給体制を構築しています。2023年11月に設置したKF技術プロジェクトが、研究開発から生産技術まで、クレハKFポリマーに関わるすべての技術課題を対象として、部門横断的に検討を行っています。
既存製品の開発については、以下のページも参照ください。
新規事業開発の推進
「環境・エネルギー」、「ライフ」、「情報通信」の分野における開発テーマについて、マーケットインの視点、他社技術の活用、グローバル展開を軸として取り組みを行なっています。
3Dタッチパネル
クレハが開発したPVDF製透明ピエゾフィルムと英国Cambridge Touch Technologies社が開発したアルゴリズムを融合させることによって、押す力の検知によるタッチパネルを実現できるようになりました。この技術によって、水中や手袋をはめた状態でも操作が可能となるほか、“押す”というユーザーの意思がともなう動作を必要とするため、意図しない作動を防止できます。
航空機エンジン部材用SiC繊維
SiC(炭化ケイ素)繊維を使用したセラミックコンポジットは、航空機の金属部品の代替として使用され、軽量化を実現して燃費向上に寄与します。他社既存品より高性能かつ高い価格競争力を実現したSiC繊維を開発しています。現在、いわき事業所で量産プロセスの開発に取り組んでおり、2030年ごろの実用化を目指しています。
PFAS無害化技術
PFAS(有機フッ素化合物)は、環境中で分解しにくい化学物質であり、各国で規制の動きが強まっています。米国のスタートアップ企業であるClaros Technologies社との協業により、PFASを安全な副生成物に変換する完全無害化プロセスを開発中であり、環境負荷低減に貢献する事業モデルの構築を目指しています。
知的財産活動
クレハでは、事業活動を拡大し、促進し、円滑に進めるため、下記を基本方針とし、知的財産活動を進めています。
知的財産基本方針
- 経営課題の解決を推進する知的財産戦略の策定と実行
- 事業競争力を担保する知的財産権の獲得と活用
- 他者知的財産権に因る事業上の障害の排除
クレハの主な知的財産活動は、下記の通りです。
- 社内関連部門との協働により、特許・市場・競合情報などを基にした競争環境分析の結果を活用し知的財産戦略を策定し実行する。
- 知的財産権は、ビジネス上の有用性を考え、他者に対して権利行使可能な「使える」権利を確保する。また、個々の知的財産権の牽制力を極大化し、効果的な高い参入障壁を構築する。
- 製品・開発品ごとの定期的な知財クリアランス調査を実施し、他者の知的財産権の侵害防止に努める。
- 研究開発部門・事業部門・知的財産部の三者で毎年協議し、事業計画・研究開発計画に即した適切な知的財産投資を行う。