人権尊重

GRI 2-24

クレハグループは、さまざまな国や地域で企業活動を展開していることから、国際基準に則った人権に対する配慮はサステナビリティ経営における重点課題のひとつであると考えています。「クレハグループ企業行動憲章」に「私達は、企業活動に関わるすべての人々の人権を尊重します」を掲げ、あらゆる場面で、すべてのステークホルダーの人権を尊重した企業活動を行っています。

方針

GRI 3-2

クレハグループは、2011年に国連で承認された「ビジネスと人権に関する指導原則」などの国際スタンダードや外部有識者からのご意見をもとに、グループ人権方針を2023年4月1日に制定しました。
この方針に基づき、クレハグループは人権デュー・ディリジェンスを確実に実施し、自らの企業活動や取引関係を通じたすべてのステークホルダーの人権を尊重するための取り組みを推進していきます。

クレハグループ人権方針

クレハグループは、企業理念の一つに「人と自然を大切にします」を掲げ、自らの企業活動や取引関係において人権尊重に取り組んでいます。
人権尊重の取り組みをグループ全体で、より一層推進するために、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」(以下、「指導原則」という)に基づく「クレハグループ人権方針」を株式会社クレハの取締役会の承認を経て制定しました。
この方針に基づき、ステークホルダーと連携し、協力しながら、国際的に認められた人権の尊重を推進します。

クレハグループ人権方針

1.基本的な考え方
クレハグループは、企業活動が直接または間接的に人権に対して影響を与える可能性があることを理解しています。私たちは国連「国際人権章典」、国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関する宣言」をはじめ、国際的に認められた人権を尊重します。

  • * 中核的労働基準の「結社の自由及び団体交渉権の効果的な承認」、「あらゆる形態の強制労働の禁止」、「児童労働の実効的な廃止」、「雇用及び職業における差別の排除」、「安全で健康的な労働環境」を含みます。

2.適用範囲
本方針は、クレハグループで働くすべての役員および従業員に適用します。
私たちは、バリューチェーン上の取引先を含む全てのビジネスパートナーの皆さまが本方針を理解し、支持し、人権を尊重することを期待します。

3.人権尊重の責任
クレハグループは、自らの企業活動や取引関係において人権への負の影響に関与することを避け、「指導原則」に沿って、自らが引き起こした、あるいは助長したと認識する人権への負の影響を是正するための適切な措置をとることにより、人権を尊重する責任を果たし、責任あるバリューチェーンを構築していきます。

4.企業活動を通じた人権尊重
クレハグループは、以下をはじめとする人権課題に取り組みます。


  • 結社の自由や団体交渉権など、労働者の基本的権利を尊重します
  • 労働安全衛生の改善・向上を進め、安全を確保します
  • 事業を行う各国・地域の法令を遵守したうえで、従業員の労働時間を適切に管理し、適正な賃金と手当を提供します
  • あらゆる差別・ハラスメントを禁止します
  • 児童労働、不当な低賃金労働、および強制労働、人身売買、18歳未満の労働者(若年労働者)の夜間・時間外労働、健康や安全に危険を及ぼす業務への就労を含む現代奴隷を禁止します
  • プライバシーを尊重し、個人情報は関係法令を遵守し適切に取り扱います
  • 安全や健康を含む地域社会の人権を尊重します

私たちは、人権への負の影響のうち、最も深刻なもの、あるいは対応が遅れると修復不可能になってしまうものについては、優先的に予防と軽減を図ります。

5.教育
クレハグループは、本方針がすべての企業活動に組み込まれ、効果的に定着するよう、全ての役員および従業員に対して教育を実施します。

6.人権デュー・ディリジェンス
クレハグループは、「指導原則」に基づき、人権デュー・ディリジェンスの体制を整備し、企業活動や取引関係を通じて与えうる人権への負の影響を特定し、その予防および軽減の継続的なプロセスを構築していきます。

7.是正・救済
クレハグループは、自らの企業活動や取引関係において人権への負の影響を引き起こした、または助長したことを確認した場合、正当なプロセスを通じて是正・救済に取り組みます。
バリューチェーンにおいて、取引関係により私たちの事業、製品、サービスに直接関連する人権への負の影響を確認した場合には、ビジネスパートナーの皆さまと協働してその防止または軽減に努めます。
私たちの企業活動や取引関係において人権への負の影響を受ける可能性のある個人とコミュニティのために、実効性のある苦情処理メカニズムを提供します。

8.ステークホルダーとの対話
クレハグループは、本方針を実行するため、お客様や取引先などのビジネスパートナー、株主・投資家、従業員、社内外の専門家、地域社会、私たちの企業活動によって影響を受ける可能性がある権利保有者等のステークホルダーと真摯に対話・協議していきます。

9.情報開示
クレハグループは、本方針に基づく人権尊重の取り組み状況を、ウェブサイト等を通じて情報開示します。

10.適用法令
クレハグループは、企業活動を行う国や地域で適用される法令を遵守します。
各国・地域の法令が国際規範と異なる場合は、各国・地域の法令を遵守しながら、国際的な人権基準を尊重する方法を追求します。

制定 2023年4月1日

株式会社クレハ 代表取締役社長

小林 豊

マネジメント体制

クレハグループは、「クレハグループ人権方針」に基づき、サステナビリティ推進委員会の下部組織として、人権部会を設置しています。サステナビリティ推進委員会は、取締役または執行役員が委員長を務めます。人権部会には、人権方針で取り組みを掲げた人権課題に関連する部署が参加し、人権デュー・ディリジェンスを含む人権尊重の取り組みを統括するとともに、年度計画の策定および進捗管理を行うこととしています。進捗および成果については、サステナビリティ推進委員会に報告され、経営層による適切な監督を受けています。

人権デュー・ディリジェンス

人権デュー・ディリジェンスとは、企業が自社・グループ会社およびサプライヤーなどにおける人権への負の影響を特定・防止・軽減したうえで、取り組みの実効性を評価し、対処方法について説明・情報開示していく一連の行為です。

企業における人権尊重の取り組みの全体像

企業における人権尊重の取り組みの全体像
  • * 経団連「人権を尊重する経営のためのハンドブック」の図をクレハにて改変

目標・実績

KPI 対象範囲 2023年度
結果
2024年度
目標
2025年度
目標
顕在化した人権課題 クレハ 長労働時間 前年度以下 前年度以下
国内グループ会社 集計開始 前年度以下
海外グループ会社

KPIの設定とクレハグループのモニタリング体制構築計画の決定

人権部会が活動開始し、人権方針に掲げた人権課題のうち顕在化したものを把握することをKPIにしました。グループ全体のモニタリング体制を3年計画で構築していきます。人権部会の活動目標は、クレハグループの人権課題を把握し、ゼロに近づけていくこととしました。初年度の2023年度はクレハの全事業所について集計を行いました。

取り組み事例

クレハの人権課題の把握と対策

クレハの全事業所を対象として人権課題を調査した結果、2023年度は、長労働時間の基準とした月80時間を超える時間外勤務の事例がありました。原因となった繁忙期の業務集中や業務過多、および工場でのトラブル対応について、業務配分の見直し、工場トラブル再発防止策の検討・実施、安定生産に向けた取り組みを行いました。引き続きモニタリングし、対策の効果を検証します。

イニシアティブへの参画

2022年度から国連開発計画(UNDP)が主催するビジネスと人権アカデミーに参加し、専門家からいただいたご意見を人権尊重の取り組みに活かしています。また、国連グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンの人権デューディリジェンス(HRDD)分科会、化学工業協会のSDGs連絡網の人権関連ワーキンググループに参画しました。これらの活動で得られた知見は、人権尊重に関わる社内担当者に共有され、取り組みの推進に活用しています。

人権教育

クレハ従業員を対象としたサステナビリティ共有会において、国際的に認められた人権、国連ビジネスと人権の指導原則、クレハグループの人権推進体制等について、動画配信による教育を行いました。(受講者数:886名 対象者:クレハ従業員 カバー率:53.1%)

苦情処理メカニズム

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クレハグループでは、従業員がコンプライアンスに関して問題のある行為を知ったとき、疑義が生じたとき、判断に迷うときに報告や相談をするための相談窓口(ホットライン)を設けています。人権に関する事項もこのホットラインの対象です。また、弁護士が対応する社外相談窓口や、女性相談員が対応するハラスメント専用窓口を設置しています。なお、ホットラインに報告や相談をしたことを理由に、相談者に対して不利益な取り扱いをすることは、規程で禁止しています。
2023年度は、クレハグループの事業継続に関わる重大な人権への負の影響や差別に関して、上記のホットラインを通じて確認された事例はありませんでした。